まよチキ!10 / あさのハジメ

まよチキ!10 (MF文庫J)

「でも……大事なのは、そこから立ち上がって歩き出さなくちゃいけないってことなんだよね。当たり前だけど、どんなに時間をかけてでも壁を乗り越えて進まなくちゃいけない。」

MF文庫Jから1月の新刊『まよチキ!』10巻です。

涼月とスバルがようやく自分の気持ちに向き合ってくれました。
ヒロイン3人全員がジローのことを好きだと認識してくれたおかげでクライマックスの舞台がようやく整いました。ここまで長かったなぁ。

自分の気持ちを押し殺そうと決めてから壊れていった涼月さんが復活してくれたのは素直に嬉しい。
涼月とスバルのこじれた関係もなくなり、これからが本番です。
ヒロインたち3人が恋のライバルだと認め合ってくれたおかげで、ここ最近のモヤモヤ感が晴れました。

ヒロインたちは自分の恋に決着を付けたがっているのでハーレムエンドは無さそう。
誰もが幸せになるエンディングはないと思うけど、このまま上手く決着つけて欲しいです。
結末が楽しみ。

オーバーイメージ / 遊佐真弘

オーバーイメージ (MF文庫J)

「まるで子供の我侭だ。あれがしたい、これもしたい。思うこと全てを実現するのが、だれだけ難しいか分かっているのか?」

第7回MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>『オーバーイメージ』です。


面白くなりそうな要素は満載なんだけど、なんかいろいろ残念な作品になっている気がする。
主人公の特殊能力が某超有名作品の主人公と被ってしまっていたり。
終盤は右腕だけじゃなくったけど…。


この能力で戦闘盛り上げるのは作者の力量が試されると思う。
今後もこの巻のラストの展開のように、相手の力を打ち消しつつ説得しかないようだと後が辛い気がする。
というか、主人公の性格から考えて、それしかなさそうな感じかな。
能力的に負けは無さそう。
負けたら終わってしまう世界だし。


主人公の言動がどうしても私には合わなかった…。
作中のキャラからも異常者と言われてましたけど、思わず頷いしてしまった。


設定で気になった点が少々。


A-1クラスに昇格して、願いを叶えることを目的にしていますが、
すでに願いがかなったA-1クラスが未だに存在するのはなんでなだろう。
A-1クラスから降格したら、願いがリセットされてしまうんだろうか?
そうなると、このゲームのクリアって一体…。
次巻あたりでそのあたりの補足説明が入るといいのですが。

豚は飛んでもただの豚? / 涼木行

豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)

「なるほど確かに、端から見れば豚は飛んでも豚かもしれんな。しかし今までと違うということに間違いないだろう。たとえ飛べなくとも飛ぼうとした時点でその豚はもうただの豚ではないだろうからな」

第7回MF文庫Jライトノベル新人賞<最優秀賞>『豚は飛んでもただの豚?』です。
MF文庫では珍しい正統派の青春物。
面白かったです。
シーンの尺が長すぎず短すぎずといった感じで、テンポよく読むことが出来たのも良かったです。
当初タイトルこれでいいのかと?思いましたが、最後まで読んでみたらこれで正解だと思い直しました。


この物語は見た目と裏腹な絶滅危惧種の超純情少年の間宮の初恋の物語。
ある日、間宮は3つ子の長女、綾が気になり始めたことを末っ子の瑞姫から指摘される。
そんなことはないと否定するが指摘されてから翌日、頭から綾のことが離れなくなっている自分がいた。
この気持ちをなんとかするために間宮瑞姫に相談を持ちかけるのだが…。


こういう物語って今の流行ではないけど、私は大好きです。
あの頃にしか味わえないであろう青春をしている感じがたまらないです。


本当に自分は変わることができるのか?というよくある壁に対しても、
あるひとつの考えに気付かされて、再び自分を変えていこうとする姿勢が素敵でした。


なにより協力関係の二人が一番のお似合いで、彼ら自身が気付いてないのも王道でいい。
今後は次女も加わって更に関係が複雑になりそうで、続きがとても気になります。


期待できる新人がまたひとりデビューしました。

魔法戦争 / スズキヒサシ

魔法戦争 (MF文庫J)

「もうやめろ。これ以上やると、お前が負ける」
「ハァ!? なに言ってんだ、わけわかんねぇんだよ!」
「実はおれにも、よくわからないんだ」
「お前の攻撃は当たらないよ」

真面目な学園生活を送っていた七瀬武はある日、部室に倒れている見知らぬ制服着た少女を発見する。
七瀬武の運命はこの出会いによって変わってしまった。
魔法使いとして覚醒してしまった彼に待ち受ける運命とは。


11月のMF文庫Jの新刊『魔法戦争』です。
ここまでシンプルなタイトルだとかえって目立ちますね。
最近の新刊の中ではかなり珍しい気がするオーソドックスな魔法ファンタジーものです。


全体的に読みやすく楽しめました。
今回はシリーズの導入巻といった感じで、本格的な物語のスタートは次の巻からかな。


本作はダブルヒロイン制らしく、作者自身、主人公が最後にどちらを選ぶかまだ決めていないそうです。
どちらのヒロインも魅力的に描かれていて、この時点ではどちらに軍配が挙がるかまだ予想がつきません。
この巻では主人公の武に電話を賭けるか迷っていた、相羽六が可愛かった。


巻き込まれて魔法使いになってしまった彼等がこれからどんな魔法使いに成長していくか楽しみです。

Tとパンツとイイ話 / 本村大志

Tとパンツとイイ話 (MF文庫J)

「自分の欲望を満たすために、光里が嫌がることをしていいはずがねえんだよ! たとえどんな理由があろうと俺は光里を傷つけるような真似はしない。そして俺は、どんな理由があろうと、光里を傷つける奴を絶対に許さない!」

第7回MF文庫Jライトノベル新人賞<優秀賞>『Tとパンツとイイ話』です。
タイトルで若干引いたのですが、MF文庫としては珍しく非ハーレムで幼馴染とのイチャラブものということで読んでみました。
いいラブコメもので、優秀賞というだけあって面白かったです。


抱きまくらと後頭部が一体化して奮闘する話
幼馴染のパンツを取り返すために戦う話
幼馴染と突然夫婦になってしまったりする話


と、タイトル通りの3編が収録されています。
どの話もテンポよく話が展開され本当に新人なのかと疑いたくなるくらい読みやすかったです。


主人公とヒロインの仲はもう鉄板でイチャラブ好きには堪らない作品でした。
主人公の親友が変態なんですけど、こいつが無駄にかっこよくていい味だしてる。
いろいろとバランスのとれた作品だと感じました。


面白かったけど、唯一の不満はタイトル。
手に取りづらかったです。
今回収録されている話から取ったんだと思うのですが、今回で全て消化してしまっているし、次からどうするんだろう。
もう少しいいタイトルがあったのではないかと、思いました。


タイトルはともあれ、また一人期待できる作家がデビューしました。
次回も楽しみにしてます。

変態王子と笑わない猫。 4 / さがら総

変態王子と笑わない猫。4 (MF文庫J)

「……小豆さんとなにをしたとしても――過去はわたしのものです。わたしが一番、付き合いが長いのですから」

変態王子と笑わない猫。最新刊です。
今回は5つの短編で構成されていました。


1章は月子との本当の出会いの話。
2章は2巻で小豆梓が沖縄にいた間の話。
3章はエミとの出会いの話。
4章は鋼鉄さんと副部長の話。
5章が3巻からの続きで梓と遊園地にデートする話。


やっぱり今回の短編を読むと、横寺は記憶を封印でもされているんですかね…。
月子とのエピソードに関しては、お面をしていたのとニブいからでいいとして、問題はエミとのエピソード。
あれだけ強烈なエピソードがあれば覚えていて当然だと思う。
次の巻でそのあたりのことは説明されるんだろうか…。


5章のラストで梓に嫉妬していた月子は可愛かったん。
だけど彼女の姿が過去に固執している感じが若干してちょっと不安。
メインヒロインだから大丈夫だとは思うけど…。


修羅場のまま終わってしまったので5巻が待ちどおしいです。

僕は友達が少ない 7 / 平坂読

僕は友達が少ない 7 (MF文庫J) 僕は友達が少ない 7 DVD付き特装版 (MF文庫J)

「だから! んなことどうでもいいって言ってんの! 昔のことなんていつまでも引っ張ってないで、今やるべきことをやりなさい!」

小鷹の妹、小鳩の誕生会をやってからの続き。


アニメ化も決まり絶好調な『はがない』最新刊です。
今回は素晴らしかった。
過去に固執する夜空と、前向きな星奈と二人のヒロインの対比が絶妙な話だった。


10年前の事を脚本に織り込むくらい固執する夜空。
親が決めた婚約についてあっさり流して自力で頑張ると言い切る星奈。


この巻で、夜空はついに幼馴染というアイデンティティさえも奪われたような感じ。
今後の彼女はどう行動していくんだろう…。
ここまで落ちて行くヒロインはちょっと記憶にない。
猫カフェのシーンの夜空が可愛かっただけにその後の展開は残酷すぎた…。


成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗かつ前向きな星奈がライバルというのはキツい。
「星奈さえいなければ今ごろ…」と嘆く、夜空の気持ちもわかります。




今回一番の衝撃はラストの理科の小鷹への問い掛け。

「もうそろそろ、先に進んでもいいんじゃないかな? だって――」

理科に指摘されてもあくまで気づかぬ振りを続ける小鷹も怖い。
ヒロインたちの気持ちも本当は気付いていてるのでは?
隣人部の現状維持を望むなら、確かに気づいていない振りくらいはするだろう…。


だけどあの会話は確実に何かを変えた。
隣人部はこの先に前に進むのだろうか?


今後の展開が楽しみになってきた一冊でした。