なれる!SE 8 案件防衛?ハンドブック / 夏海公司
「私は見てみたいんです。今のハードワークを乗り越えた先に何があるのか。自分がどんな人間になれるのか」
電撃文庫12月の新刊「なれる!SE」8巻『案件防衛?ハンドブック』です。
今回のテーマは『案件防衛』。
今やってる仕事を他社から取られないように、どう動くか?というお話です。
新興ベンチャー企業に次々と仕事を奪われていくスルガシステム。
橋本課長のいる業平案件までついに魔の手が延び、桜坂の社畜魂に火が灯る。
やっぱり桜坂は新人じゃないですね。
業界トップJT&Wのセールスエンジニアからすでにマークされてるだけには飽きたらず、その人脈を駆使して今回のピンチを凌ぐとか。
相手企業の社長がヘッドハントしようとしたのは当然の流れだと思った。
まぁでも、これまで桜坂が歩んできた修羅場は伊達じゃない。
あの辛い仕事を乗り越えてきたからこそ、ここまで成長した桜坂がいるんですね。
桜坂の勝因は上司やいろんな人を巻き込んで色々動けたところ。
大抵は自分で一人で抱えて潰れちゃう。
だけど、彼はしっかりと周りに相談して、打開策を見つける。
ここまで優秀な人なかなかいない。
次郎丸もあと一歩及ばずでしたが、彼女も相当優秀。
特に彼女の貪欲さは、忘れかけていた大事なもののような気がします。
「勝負に負けてへらへらしていられる人間など私のチームに必要ない。敗北して悔しがるのは当然、泣くほど屈辱ならその思いを次回にぶつけてみたまえ。それともなんだ、君の気持ちはたった一回の挫折で折れる程脆いのか?」
自分の日々の仕事っぷりを思うに、彼女ほどに真剣に取り組んでいたかと問われると、取り組んでないと言わざるをえない。
もっと真面目に仕事しよう!と、ちょっと胸が痛くなったお話でした。
なれる!SE 7 目からウロコの?客先常駐術 / 夏海公司
「いいですか桜坂さん、私たちはプロです。プロとは能力・作業に対し正当な対価を要求するものです。費用対効果や人間性を無視された挙げ句、言われるがまま扱き使われるなんてまっぴらです」
「なれる!SE」7巻『目からウロコの?客先常駐術』です。
今回のテーマは『客先常駐』。
今回取り上げられた事例はかなり酷い例だといいたいけど、全部否定できないところがこの業界のすごいところ。
SI案件といったらほぼこれだど思っていいとくらい、顧客先常駐ばっかりです。
でも、このエピソードの事例みたいに、入室前に持ち物を回収までやってるところは多くないです。
ここまで厳しいのはごく少数。
破綻してる炎上プロジェクトに応援メンバーとして送り込まれることは、ままあります。
特に他の仕事がないときなど、他の部署のデスマプロジェクト送りされたあげく、後日その部署に異動とかね…。
部門の都合とかいろいろあると思うけど、異動までされると売られたんだなって思いますね。
話は変わりますけど、梢さんのストーカーっぷりが悪化してて面白かった。
イラストの目の色とか完全にヤンデレそのもの。
ナイフとフォークで何をするつもりだったんだろう…。
そんなヤンデレさんでも、仕事に対する意見は正論でした。
それでも発注された側としては、仕事をこさないといけないところが辛いところ。
でも、逃げれるときに逃げないと、壊れてしまうのも事実。
この話のように上手く逃げられるのは奇跡といっていい。
しかし、ここまで酷い発注元もなかなかいないと思いたいな。
これ以上赤字にしたくはないとはいえ、残業まで認めないのはちょっとブラックすぎる。
社内政治まで絡んでくると、話は余計に複雑になりますね。
上司との飲みの席で幹部社員の政治の話を聞くことがあるけど、その内容は結構引きます。
人として明らかに終わってると思う人がなんで出世してるんだろう…とか思えるエピソードもあったり。
世の中わかりません。
あとがきの入退室カードのエピソードには笑ってしまったけど、よく考えたら笑えない。
そういう笑えないことが、時として普通に起きてしまう異常なIT業界。
なんでまだこの業界で仕事してるのかわからなくなってきた。
改めてこの業界のブラックさを再確認できるエピソードでした。
ソードアート・オンライン 11 アリシゼーション・ターニング / 川原礫
「たとえ法で禁じられていなくても、してはいけないことは存在するし、また逆に、法で禁じられていたとしても、しなきゃいけないことだってあるかもしれない」
電撃文庫12月の新刊「ソードアート・オンライン」11巻『アリシゼーション・ターニング』です。
物語は、キリトとユージオが上級修剣士になったところからの続き。
サブタイトル通りターニングポイントなお話で、物語は一気にアンダーワールド世界の核心に迫っていきました。
前回の流れから、このまま順調に整合騎士への道を進むのかと思いきや、やってくれました貴族出身の二人。外道にもほどがある。
システム制限を超えて、行動してくれたユージオくんはブラボーです。
ティーゼとロニエが無事で良かった。
キリトさんもギリギリで間に合って良かった。
今回の件で、予想よりも早く目標に近づてむしろ結果オーライでしたね。
整合騎士になるということが、どういうことかわかったし、知らないまま勝ち進んだ場合、より最悪な結果になってたような。
このまま行くと、フェアリダンス篇と同じくシステム管理者権限を持つ相手を倒さないといけないんですかね。
茅場明彦の加護が無いこの世界でこの先、どう戦っていくんだろう。
剣で倒せる相手とは思えない。
最長編だとは聞いていたけど、まだまだ終わりが見えないですね、アリシ編。
今回もまたいいところで終わってしまって、続きが気になって仕方ない。
刊行ペース的にSAOの次巻は来年四月…。待ち切れないけど、待つしか無い。
彼女を好きになる12の方法 / 入間人間
「きみは理由を欲しがってばっかりだね」
入間さんの『彼女を好きになる12の方法』です。
彼女のことが好きかわからないけど、一緒にいる男と
彼女のことが好きだけど、ずっと片思いの男。
そんなふたりの視点で交互に進んでいくお話。
3年もの間、声もかけずに永遠と片思いしてる様が描かれる男の惨めさがすごい。
こういう男が現実にもいそうで、なんか怖かった。
こうやって文章にして描かれると、その気持ち悪さがより、くっきりとする。
思い切って声かけた結果、避けるべき男として認識されてしまうところとか妙にリアル。
片思いを拗らせるとこんなふうになってしまうのか…。
もう一人の彼と彼女のやりとりは端からみると、イチャイチャしてるバカップルそのもの。
これで付き合ってないとかいっても普通の人は信じないだろう。
付き合っていないからこそ、あんなに楽しく二人一緒にいられるのかな。
あの二人の関係はなんか憧れます。
私は彼女の言い分に納得で、好きになるのに理由はいらないと思う。
むしろ理由があって好きになったものは、理由をつけてあっさりと嫌いになってしまいそう。
1月以降どうなるかと思ったら、以前よりもイチャイチャしてて凄かった。
下手な恋愛小説より破壊力が高いよこの二人。
トカゲ、たったひとつのねがいと、ダーク系な話ばっかり読んでいたせいもあってか、久々にイチャイチャ系の話で読んで心が和んだ。
次はどんな話になるんだろう。
問題児たちが異世界から来るそうですよ? ウロボロスの連盟旗 / 竜ノ湖太郎
「もう大丈夫。………彼が来た」
角川スニーカー文庫12月の新刊から「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」の6巻『ウロボロスの連盟旗』です。
話し的には前後編の前編といった感じで、本格的なバトルは次回に持ち越し。
今回のメインはジンかな。
彼がここまで成長してるとは思わなかった。
ペストも殿下も彼の評価を改めるのも当然。
最後のジンとペストのエピローグシーンが良かったです。
今回すごく残念だったのが、お嬢様が貰った新装備のお披露目がうやむやな展開になったところ。
結局のところあの人との約束どうなるんだろう?流れ的に同盟組むでいいのかな。
それにしても殿下のあのデタラメな強さは十六夜を彷彿させますね。
彼の正体って、十六夜とは別の世界にいたもう一人の十六夜と同じ存在とかないかな?
いろんなパラレルワールドからもこの箱庭の世界に召喚されるなら、それもアリな気がしてきて。
次回は十六夜と黒ウサギがメインの回のようなので、十六夜の秘密が一端でも明らかになるといいな。
原典候補者ってなんなんだろう。
六花の勇者 3 / 山形石雄
「またあなたを、助けに行っても、いいですか」
スーパーダッシュ文庫11月の新刊『六花の勇者』3巻です。
相変わらず、タイムリミットがもたらす緊張感が堪らない物語。
ここまで緊迫感がある話はなかなかない。
間一髪すぎて読んでる間ずっと緊張しっぱなしで疲れた。
三勢力が絡み合ったせいで、より複雑になった今回の事件。
あの仕掛けは当事者には、もうわけわからないだろう。
以下の感想はネタバレを含みます。
続きを読むたったひとつの、ねがい。 / 入間人間
「きみは、好きなものは先に食べる方かな? それとも、最後かね」
メディアワークス文庫11月の新刊『たったひとつの、ねがい。』です。
表紙イラストの爽やかさと、プロローグ数ページから受ける印象で油断してたせいもあってか、いきなりガツンとやられた。
これ耐性ない人はそうとうキツイと思う。
個人的には「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」の比じゃないくらい、ダークな物語で問題作だと思う。
テーマは復讐。動機もすごいシンプル。
ここまで黒い話は久しぶりなんじゃないかな。
トカゲの王のナメクジの姿を見ても思いましたけど、入間さんが描く、復讐に囚われた人の熱量の凄さはすごい。
執念という言葉ひとつでは語れないくらいすさまじいものが、そこにはある。
たとえ半身しか動かせなくとも、たったひとつのねがいを叶えるためにそこまでするのかと…。
思い込みというのはすごいもので、こうも見事に騙されるとある意味気持ちいいですね。
疑いすらしませんでした、その可能性に。
帯のキャッチフレーズ「この物語に、同情の余地なんかない。」は正しかった。