天鏡のアルデラミン / 宇野朴人
「……ヤトリ。イクタ・ソロークとは、結局、どのような男なのだ……?」
「ひねくれた男です。……けれど殿下、真っ直ぐな棒だけでは家も建ちませんから」
高等士官試験会場に向かう舟が沈没したのが全ての始まりだった。
軍人にだけはなるつもりがなかったイクタが、名将と呼ばれるまでの物語。
これはいい知略物、面白かったです。
主人公は怠惰を信条に掲げているものの、いわゆるやれやれ系ではなく、やるべきときには自ら先頭に立ってしっかりと働き、自分の気に食わないことに対してはハッキリと意見を言う、どちらかというと、熱血タイプな主人公だったと思う。
物事の本質を付いて行くその姿はメディアワークス文庫の0能力者ミナトを思い浮かべる。
まあイクタはミナトほど口は悪くはなかったけど。
その性格から、イクタのことを良く知らない人たちからの評判が悪い彼でしたが、
戦略家ともいえる彼の才能を片鱗一度でも体験した後、その評価の変わりっぷりったらない。
でも、あの演説は惹きこまれちゃうな。
カリスマ性も抜群だよイクタ。
主人公以外の登場人物もバランス良くキャラが立っていていい。
今はまだ3人に劣っているマシューだけど、彼はいつか大成して欲しいな。
表紙の子のヤクタとは、すでに信頼関係が完成されているせいか、あまり彼女をヒロインだとは感じなかった。
終盤の展開をみるに、12歳の皇女シャミーユの方がヒロインっぽくみえる。
日本という前例を知っているためか、皇女の計画はとても楽しみ。
戦記物として最後まで書ききって欲しい。
続きが楽しみな物語がまたひとつ始まった。