ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル / 竹内ゆゆこ

ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)

「……もしも、むかついちゃったなら……傷ついちゃったなら、まだ、終わってないんじゃないの」

電撃文庫6月の新刊から『ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル』です。

二次元に生きると宣言した彼が、中学卒業を気に疎遠になった幼馴染の後輩との再会をきっかけに心を揺らす話。

三次元に対するコンプレックスを拗らせた彼の心理描写が妙に現実感たっぷりで、一部の描写は読んでいるこっちの心に突き刺さり辛かった。
本編でもそうですが、誰もが自信満々に生きているわけでなく、心の底にいろいろな悩みを抱えながらも日々を生きているというのがよくわかる。
前半と比べて後半の2つのエピソードは重く、二次元くんのアイデンティティをこれでもかと揺さぶっていき、終盤で心が折れた彼は酷い有様だった。

あの出来事は心が折れてもしょうがないと思う一方で、あれで挫折してしまう程度の情熱だったんだと少しガッカリもした。
それゆえに腐女子の愛可が二次元くんに言いたいことを言ってくれたシーンは正直スカッとした。
落ち込んでいる彼に甘いことを言わないのは彼女の優しさだと思う。

追い込まれ、行く宛を失った彼はようやく自身の本音を見つけ出す。
終わってみると、リア充の物語すぎて何処が2次元スペシャルなんだ?と思わなくもないが、自信の気持ちに揺れる物語という点はまさしくゴールデンタイムだったと思う。

ゴールデンタイムを読んだ人がなくても楽しめる、いい青春小説でした。