憑物語 / 西尾維新

憑物語

「だからと言って、失敗や不幸を、犠牲や悲しさを『いいもの』だとは思えないし――思っちゃ駄目だろ」
「…………」
「どうせなら成功して成長したいよ。当たり前だけど」

物語シリーズ、ファイナルシーズン一冊目『憑物語』です。

八九寺真宵千石撫子に続き、阿良々木暦は今回もまた、今まで行なってきた事柄への対価の支払いを余儀なくされていく。
何かを得るためには同等の対価が必要という、某錬金術師の有名なフレーズを思い出さずにはいられない展開。

全てが全て、黒幕の思い通りにならないのは良かったのですが、今回の決着の仕方はモヤモヤ感がたっぷりですっきりしなかった。
それでも終わり向けて物語がまた動き出した感じがして、ファイナルシーズンの残り2冊が楽しみ。


ここから先の感想はネタバレを交えています。
未読の方は注意してください。










吸血鬼化が進行しているということが判明し、今までのように、怪異に対して何でもかんでも忍や無敵の吸血鬼化に頼ることができなくなった暦。
どんどん足場が崩されていく様を見ると物語の終わりが見てとれ、少し寂しくも思いました。

あまりにも出来過ぎな展開に、あえてその流れに逆らった正弦。
彼女の思惑に乗りたくないとはいえ、あそこまで簡単に自分の命を捨ててしまえるのは凄い。
だけど、自分が誰かのシナリオどおりに動かされていることを悟ってしまったならば、あんな決断をしてしまうのもわからなくもない。

しかし、自分たちの敵だと思っていた相手自身が、自らの行動に疑問を持ち予想外な行動するのがまさかこれほどまでに怖いとは…。
あの対決シーンは暦同様に、こちらも動揺させられました。

それにしても忍野扇のラスボス感はまた凄いですね。
というか、もうあからさますぎて、逆になにかあるのかもしれないって思ってきてしまう。

以前として行方不明の忍野メメですが、ファイナルシーズンの物語の鍵は彼なんですかね?
ここまで、臥煙伊豆湖さんの関係者が登場してくると
外伝として、彼等の大学生時代の話が読んでみたくなります。

戯言シリーズにおける零埼シリーズみたいに、忍野達の外伝話とかファイナルシーズン終了後にでるといいな。