マグダラで眠れ / 支倉凍砂

マグダラで眠れ (電撃文庫)

「俺とお前のマグダラは、同じ場所にあると思うんだがな」

騎士団お抱えの錬金術師のクースラは、炉に聖者の骨をくべた罪で投獄されていた。
二週間後、謎の死を遂げた錬金術師トーマスの研究を引き継ぐ任務と引換に釈放される。
街につき工房に出向くいた彼は、監視役だと名乗る少女フェネシスと出会う。

狼と香辛料シリーズの支倉さんが送る新シリーズ『マグダラで眠れ』です。

錬金術師クースラと、監視役フェネシスとのボーイミーツガール。
前作と同じく、情景描写が多めの内容でしたが、製鉄に関する描写や、狼と香辛料とはまた違った、主人公とヒロインのやり取りが絶妙で楽しかった。
保護欲を誘う彼女をからかいたくなるのはわかる。

「神は金属を純粋な形で地面に埋めなかった。人は様々な方法でそこから不純物を取り除き、純粋なものに仕上げていく。その過程は長く、大変だ」

日々研究に明け暮れる錬金術師の生き様は、現代でいう研究者そのもの。
真理を追求するために日夜実験を繰り返す彼等だけど、この時代では錬金術師と呼ばれ偏見を持たれていた。
研究のためとはいえ、鉄の純度をあげるために聖者の骨を使おうとしたら、そう思われてもしかたない。
教会が強い権力を持っていた時代において、科学は神の奇跡を否定するものだと思われてしまう。

しかしたとえ偏見を持たれても、自分の夢を目指すために突き進む彼等の姿は眩しく感じたし、彼女の正体を知ってなお、こちら側に引きこもうとするクースラの変化はなんか嬉しかった。
フェネシスが、クースラの夢を聞き、彼に自分の運命を託そうとするシーンはとても良かった。

一難は去ったみたいですけど、この先ふたりに待つ運命は想像がつかない。
続きが気になります。

面白かった。