ココロコネクト ステップタイム / 庵田定夏
ファミ通文庫6月の新刊『ココロコネクト ステップタイム』です。
「ヒトランダム」以前の話が2編、「ユメランダム」以降の話が2編の短篇集。
どの話も面白かったです。
なかでも良かったのは、「デート×デート×デート」のトリプルデートの話。
熟年カップルかと思う完熟っぷりをみせる、太一・稲葉ペアとは反対に、初々しさ満載の唯・青木ペアと中山・石川ペア。
三者三様のデート模様はまさに青春だなっといった感じでした。
では、ここから先は個別の感想になります。
- ファーストエンカウンター
「まあ……、アレだ。なんだ。アレだ。アレなんだよ結局」
文化研究部創立時のお話。
すべてはここから始まったと思うと、感慨深い。
太一も言ってるとおり、『なんとなく』っていう感覚って大事だなと思う。
言葉では言い表せないけど、本能で感じてることは大体正しい。
- ふたりぼっちの友情
「お前の問題はアタシの問題でもあるっ! そう決めたんだよっ。だから迷惑かけろよっ、アタシに」
伊織と稲葉の友情物語。
出会ったばかりの二人の仲が新鮮。
空気読んでキャラを変える伊織を不審に思い、警戒する稲葉でしたがストーカー騒動で一変。
いい熱さを魅せてくれた。
- デート×デート×デート
「普通のカップルがやるような……決まったステップを乗り越えていくことが、付き合うってことじゃないと思う」
「自分達が一つ一つ積み上げていくもの、それが合わさって、恋愛になるんだ。別なんだってありなんだ。自分達が納得できているなら」
冒頭でもふれた、トリプルデートの話。
中山さんと唯のテンパり具合が初々しい。
自分らしさを出せず、彼女たちにとっては残念なデートになってしまったけど、失敗することで見えてきたものがある。
次はきっと上手くいく。
それにしても青木の懐のでかさは異常。
尻にしかれるかと思ってたけど、案外青木が引っぱっていく感じになりそう。
- デート×デート×デート
「いやなにが藤島らしくなくて、どれが藤島らしいかなんて俺には決められないけど」
「だってそれは藤島が決めることだ」
リア充になるためにはどうすれば?
恋愛神、藤島と文研部の1年の二人がリア充になるために迷走する話。
藤島さんファン待望の話。
藤島さんが凹みそうになってヤバイとか思ったけど、渡瀬くんGJ。
紫乃と千尋のふたりも、ようやくお互いを意識し始めてくれてなんか嬉しい。
もう付き合っちゃえよ。
ラストエピソード前にサブキャラも魅力的に描かれていく流れでした。
それだけに、ラストエピソードの伏線が余計に不吉な予感を感じさせてならない。
最後は上下巻構成ということで、事件の規模もこれまでと比べて大きいものになりそう。
文化研究部、いや山星高校生は無事乗り越えられるのか。
今から楽しみ。