鴨川貴族邸宅の茶飯事 〜恋する乙女、先斗町通二条上ル〜 / 範乃秋晴

鴨川貴族邸宅の茶飯事―恋する乙女、先斗町通二条上ル (メディアワークス文庫)

「l恋に時間は関係ございません。人は一秒もあれば心を奪われるのです」

メディアワークス文庫6月の新刊『鴨川貴族邸宅の茶飯事 〜恋する乙女、先斗町通二条上ル〜』です。

著者の作品は「マリシャスクレーム」、「特異領域の特異点」と読んできましたけど、この作品もまた一風変わったお話。
執事喫茶を舞台にした普通の小説だと思って読むと、裏切られるかも知れません。
殺人拳の使い手を執事見習いとして雇った時点で、この話はどこに向かっていくんだと思いましたが、なかなか面白かった。


以下、ネタバレありの感想







理想追い求めた結果、結婚できない女性がいるというのは聞いたことがあるけど、それが社会現象にまでなっている設定。
執事との擬似恋愛体験し、失恋させることによって、シンデレラコンプレックスを解消するお話でした。
理想だと思っていた男性からフラれることで本当に、現実に生きることができるようになるのかはちょっと疑問だけど、こういう突き抜けた設定にした物語にするのは範乃さんらしいと思う。

この物語の楽しみどころは執事見習いの拳正のめちゃくちゃっぷり。
どこまでも噛み合ってない会話なのに、なぜか成立してる衣麻お嬢様とのコミニュケーションが楽しかった。

それなのに、衣麻お嬢様と拳正の話が回収されないまま終わったのが残念過ぎる。
次回の伏線としてとっておくのはいいんだけど、またマリシャスクレームみたいなことになったら…と思うと
できる限り、伏線は回収して欲しいなとか思ってみたり。
続きでますよね。