変態王子と笑わない猫。 5 / さがら総

変態王子と笑わない猫。5 (MF文庫J)

「ボクはもう、なにがあっても、女の子を泣かせたりはしない。ぜったいぜったい、心にちかったんだ」

筒隠姉妹の祖母からイタリアへ帰ってくることを勧められ悩む姉妹。どうも、過去の記憶で祖母と姉で食い違いがあるようだ。そんなとき「過去を確かめたいという思い」を笑わない猫が叶え10年前にタイムスリップすることになってしまった横寺と月子。10年前の筒隠家には、今は亡き筒隠姉妹の母の姿だけがあった…。

MF文庫Jの3月の新刊から『変態王子と笑わない猫。』の5巻です。
月子ちゃんと横寺のやりとりが相変わらず微笑ましくて素晴らしい。

そんな彼等のやり取りとは別に今回のストーリーは泣かせてくれて、とても良い話でした。
大事な選択を間違えてしまった結果、離れ離れになった母娘が絆を取り戻すという展開がグッとくる。家族の絆ネタはどうしてこんなにも心を揺さぶるんだろう。

「いいも悪いもねえよ。おまえも『こっち側』だろうが」

現代に戻る前に横寺が見た風景は胸に来るものがあった。


ここから先は重大なネタバレありの感想となります。(未読注意)








今回ついに、横寺の記憶が曖昧だった伏線が回収された。10年前に猫に願った結果だったとはいえ、彼が失ったものは大きい。今回、そのきっかけになった出来事を目の当たりにした横寺でしたが、彼はそのことを少しも悔やんでいない。それどころか、とても前向きだ。

「長さが一番じゃなかったとしても、そんなの関係あるもんか。これまで積み重ねられた思い出より、これから積み重ねていく想いのほうが大切なんだ」

大事なところでバシって決めてくれるところは主人公らしくカッコイイ。変態さんだけど。子供のころから、あんな出来た子だったとは思わなかった。変態さんになってしまうけど。

そして月子ちゃん、おめでとうって言っていいのかな?なんだか、これが新たな波乱の幕開けのようにしかみえないけど、今は彼女を祝福したい。おめでとう。