INNOCENT DESPERADO / 綾崎隼
「好きな人が好きな人を、強がりではなく好きになれたら良いんだけどな」
メディアワークス文庫の2月の新刊『INNOCENT DESPERADO』です。
綾崎さんのデビュー作『蒼空時雨』より10年前の物語。
紀橋朱利とその友人たちとで巡る逃亡劇。
朱利の屈折した背景がわかる物語でもありました。
成就する恋だけが青春ではないんだと痛感させられた。
報われる者がいる一方で報われない者もいる。
読み終わった直後の気持ちをなんと表現すればいいのかわからなかった。
きっとこういう気持ちを『せつなさ』と呼ぶんだろう。
読了後に帯の言葉を読んでいろいろと納得。
好きな人から好きになってもらうことの難しさったらない。
報われない恋だとわかっても、好きだという気持ちを抑えられずにとった彼の行動を責められるだろうか。
私にはできないな。
朱利が出るということで、例の演劇部がもう少し絡んでくるかと思ったらそうでもなかった。
演劇部についてのお話はどこかで読んでみたいですね。
あらためて綾崎さんの描く世界が好きなんだとわかった一冊でした。
4月に出る『ノーブルチルドレンの断罪』も今から楽しみ。