恋物語 / 西尾維新

恋物語 (講談社BOX)

「それは、いいように騙されたわね。私に」

化物語セカンドシーズン最終巻『恋物語』です。


まさにセカンドシーズンのトリを飾るべく内容で、面白くて一気に読破してしまいました。
この内容でタイトル詐欺じゃないところが凄い。


冒頭を数行で今回はお前かよ、という思いでしたが、彼だからこそ騙れる内容であり、彼でなければ出来なかった解決だったと思います。彼が騙った同じ言葉を別の人が語っても、彼女は決して騙されはしなかっただろう。


それにしてもあの人がここまでカッコよくなるなんて、誰が予想できたんだろうか。
私の中では戯言シリーズを含めた西尾維新作品に登場する大人達中で、彼のランクがこの物語で一気に跳ね上がった。不良がいい事すると評価が上がるのと同じ現象かな。



というわけで?ここから先の感想はネタバレを交えています。
未読の方は注意してください。























語り部が詐欺師の貝木泥舟とわかった瞬間に、また西尾維新に騙されたと思ったけど、この騙され方は嫌いじゃない。
冒頭で騙る彼の言葉そのものが嘘だった気がするくらい、彼の本音が語られていた内容で本当面白かった。



そして冒頭の言葉どおり、いろいろと煙に巻くような彼の語り口は、本当に何が真実で嘘かわからない。
当初は彼が戦場ヶ原の依頼を受けた理由は言葉通り、神原駿河かと思ってたのですが、読了後は戦場ヶ原のためだったと思い直しました。

「自分で自分が何をやっているのかわかってる奴なんかいるのかよ。お前だって、どうして俺とこんな話をしているのか、どうして俺にそんな話をしているのか、わかってないんじゃないか?」

まぁそんなことはわからなくてもいいのかもしれない。
本人にさえ真実なんてわからないのだから。




今回は語り部の変更以外にも、私の予想をいい意味で裏切ってくれる展開の連続でした。
羽川は出ないのかと思えば、海外から駆けつけて貝木と接触する羽川とか。
特にラスボス撫子を詐欺師の貝木が相手をするとか、今まで違った展開になるとわかりきってるだけにワクワクしました。


そして、言葉どおり最期の最期まで貝木に騙されっぱなしの私がいた。
この巻ではあくまで解決するまでの期限を延長するだけかと彼の言葉を鵜呑みにしていただけに、最期の展開が熱く、追いつめられた彼の言葉は心に響いた。

「だが、なろうと思わなきゃ、なれないものだぜ――神様とか、幸せとかと違って」

結末がちょっと衝撃的で驚きましたけど、花物語では元気に神原駿河と焼肉食べてたし、きっと生存してるでしょう。


あっさり倒されてしまった、元ラスボスの千石撫子でしたけど。
真ラスボスはやはり、忍野扇か。
彼?彼女?の暗躍っぷりはセカンドシーズンが進むにつれて露骨になっていきましたけど、その結末はファイナルシーズンへ持ち越しへ。


来年もまた、物語シリーズが読めて嬉しいですね。今から楽しみ。