双子と幼なじみの四人殺し / 森田陽一

双子と幼なじみの四人殺し (GA文庫)

「そりゃ正しい方がいいよ。でもさ、もうちょっと自分の影響力を考えて行動しなよ。私は強いから本気で人を殴ったりしない。何事も力加減だよ。本気で正義をしたら迷惑だよ。それが最善の結果にならないことぐらい――分かってるでしょ?」

第3回GA文庫大賞《奨励賞》『双子と幼なじみの四人殺し』です。


今年最期にこれまたダークな作品が出てきました。
ジャンルは暗めの青春小説?かな。
主人公と双子がイチャイチャしてるシーンは多いのですが、最後まで読むとやっぱり全体的に暗い話だったと思います。
人を選ぶ作品だと思いますが、私はこういう雰囲気結構好きです。
入間人間氏の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』が好きな人は合うかもしれません。



中学3年のある日の事件をきっかけに同居することになった、主人公の菱川迷悟と、双子の美少女、新山一縷と朽縷。
3人の仲は非常に良く、幼馴染という関係もあってか互いの距離感がしっかりと確立されているのですが、
逆にそれが完璧すぎて、どこか歪んでいる感じを受けました。


ただ彼ら自身、ここから先どこにもいけないと悟っているけども、幸せになりたいと思えるところに特別な強さを感じました。
例えそれが、世間一般の幸せとは違っていても。
幼馴染なのに上手く関係を構築できず、関係が壊れてしまった胡桃沢と清水と彼等はとても対照的にみえました。


保険医の三川はこの物語に登場する誰よりも歪んでいた。
生徒達に対する彼女の言い分は正しいと思う。
だけど彼女の正しさは間違ってると思う。
彼女自身それを自覚して行動してるから、たちが悪い。


迷悟と彼女はとても似ている。
迷悟と彼女の違いは自覚があるかないか、それだけ。
やり方はともかくとして、結果として彼女に救われている人間がいるのがこの世界の理不尽さをよく表してる気がしました。


予想以上に食わせ者だった彼女に目をつけられた主人公たちはこの先どうなるんだろうか。
壊れてしまうのか、それとも、成長するのだろうか。
次の巻が楽しみです。