なれる!SE 5 ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア / 夏海公司

なれる!SE (5) ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア (電撃文庫)

「あんた、ここで私達が断ったら現地のお客さんはどうなるの? 夜中に障害誤検知で叩き起こされた担当者の立場は?」

SEをテーマにしたライトノベル、「なれる!SE」シリーズ5巻目。
今回は新人SE桜坂くんの初出張の話。


相変わらず、この業界の酷さがわかってしまい色々泣けてきます。
切替日にあそこまで準備が整ってないってのはすごい。
私自身この業界にいるのですけど、あれが標準だと思われてもなぁと反論したい気持ちもあるんですけど、フォローできる言葉も見当たらない。
ドキュメントが最新になってないとか、よくあることだし…。
切替日とか初稼働日にトラブルが無い方がむしろトラブルだと思ってしまう。
作中でも、大阪での設置作業になんのトラブルもなく作業が終えたときに、これは何かの間違いだと、桜坂が混乱したのも悲しいことにわかります。


作中でも桜坂の社畜っぷりが描写されてますけど、SEってあそこまで酷いのはなかなかいないよ?
実際はほんの少しだけ他業界より辛いだけで、他業界もあんまり大差ないくらい大変じゃないのかなと思ってます。
どんな炎上プロジェクトでも、それを乗り越えれられれば、後では笑い話になったりしますし。
案外楽しいよ?と現役SEが言ってみたりします。


今回の話でなにより驚愕だったのが、あれだけ現地トラブルを連発されても、全て間に合わせてる桜坂。
まだ一年目だったよね、確か…。
前回PM業務に携わったとはいえ、あそこまで顧客調整能力が高くなってるとか…うちの会社に欲しい。
最後の修羅場も徹夜中によくあんな対策案を思いついて、顧客調整までよくやりきったなと素直に感心しました。
フィクションだからと言ってしまえば簡単なんですけど、あんな新人いたらどの会社も手放さないだろう。
もう完全にベテランです。


『ありがとうございました、おかげさまで無事今日の業務を始められそうです。桜坂さん達のおかげです。本当にどうもありがとうございました』

実際にこんなふうに声を掛けてもらって、嬉しくなる気持ちはわかる。
どんなに辛い仕事でも、エンドユーザーからの声ってのはやっぱり励みになります。
次の仕事も頑張ろうって。
SEの大抵は情報システム部門の人と仕事するため、直接エンドユーザから感謝の声が聞けたなんてほとんど無いですからね。
でもこれはSEだけじゃなくて、全ての仕事に共通して言えることですね。


今回はどんな酷い案件でも、愚痴をいいながらでも、完遂させるのがプロなんだと改めて感じることができた一冊でした。



真面目な話はここまでで、ここからは表紙を飾った梢さんについて。


なにあれ怖すぎ。
最近出番があまりなかった彼女でしたけど、まさかあんなキャラ付けされて帰ってくるとは思ってなかった。
大阪では桜坂のこと完全にモニタリングしてたよね?
途中で室見さんに呼び出されなかったら、あのまま罠にハメられて行くところまで行ってたかもしれない。
このシリーズのラスボスは社長じゃなくて梢さんだった。


ブコメ分はあまり期待してないのですが、室見との仲は今後進展するのかな。
徐々に室見の私生活が見えてきたりしてますけど…。


さて次回はどんな炎上プロジェクトが待ってることやら。
今から楽しみです。