山がわたしを呼んでいる! / 浅葉なつ

山がわたしを呼んでいる! (メディアワークス文庫 あ 5-2)

「呼ばれた?」
「ふっと登ってみたくなったり、今まで縁がなかったのに急に登ることになったり、そんなふうにして白甲ヶ山に来る人たちのことを、ここではよく『呼ばれた』って表現するんだ」
「呼ばれたことには必ず意味があるから、それを探してみるのも悪くないかもしれないよ」
「……あるのかな、ここに来た意味」

理想の女性を夢見ていたあきらが向かったバイト先の山小屋は想定外のボロさだった。
準備不足なまま山に登ったことを口の悪いバイトに攻められ続けた結果、彼女は被っていた猫を剥がしてブチ切れる。
こんな場所では理想の女性になれるはずないと、下山を決意するが自分のせいで山小屋の主人が怪我してしまい…。
代わりのバイト来るまでの間、彼女は山小屋で働き始めるのであった。


『空をサカナが泳ぐ頃』でデビューした浅葉なつさんの新作『山がわたしを呼んでいる!』です。
インドア派の私にも登山がしたくなるくらい山の魅力と厳しさを教えてくれた、いい青春小説でした。
物語のテーマは前作と同じ『自分探し』。


ちょっと変わった山小屋の主人に、山伏の格好をした医者、
マニュアル本が手放せない人見知りなバイト、口は悪いが腕はいい山猿みたいなバイトにイケメンカメラマン。


個性的な人達に囲まれながら、『山に呼ばれたことには必ず意味ある』という言葉を信じて、悩みながらも山小屋で働き続けます。


色々なことに戸惑いつつも、徐々に山の良さを知っていき本来の自分を取り戻していくあきら。
最終日の朝に御来光をバックにした大樹とのシーンはとても印象的でした。
あれだけ嫌っていた大樹に気付かされてしまったところが、ちょっとだけ残念したけど、やっぱり人が成長する瞬間って素晴らしい。


下山した後のあきらが本当に変わっていて、笑ってしまった。
最後に『呼ばれたの』と再び山へと戻っていく彼女の姿が良かった。


今回も楽しまさせて頂きました。
次回も良い物語をお願いします。