囮物語 / 西尾維新

囮物語 / 西尾維新 / 講談社BOX
囮物語 (講談社BOX)

「誰かを好きになるというのはとても素敵なことだと思うんだ――それだけで生きていこうって気になって、それだけで元気になって、ふかふかのぽわぽわになるものなんだって、思うんだ」


猫物語(白)から始まったセカンドシリーズ。
ヒロインのキャラクターを解体していく展開は本作でも健在。


100%首尾よく書かれた小説とはよく言ったものだと思います。
いったいいつから、このシナリオを考えていたんだろう。


個人的には猫物語(白)と匹敵するくらい面白かったです。
展開が展開なだけに受けた衝撃がそれほど強かったせいでもあるのですが。




ここから先はネタバレを交えての感想です。












本作は千石撫子が怪異になるまでの話で、物語は冒頭からクライマックス。
数ページで物語に引きこんでくれます。
そこから時系列を戻して撫子がどうして怪異になってしまったか、撫子視点で描かれて行きます。


撫子のキャラクターがこれでもか、というくらい解体されていきます。
圧巻だったのかが月火ちゃんとのやりとり。
何気ない一言をきっかけに、撫子が隠し続けていた本性と本音が暴露されていきます。

「宝くじを買う人っているじゃない。あんなの、普通に買ってて当たるわけがないのにさ。それなのになんで買うのかと言えば、『夢を買ってる』って言うんだけど……、その言語を聞くたびに私なんかは思っちゃうわけだよ――『現実を買え』」

中学生の台詞とは思えない。


叶わない夢をみること。
『精神を安定させるために誰かを好きになること』
叶わなくても傷つかずに済むから、暦お兄ちゃんのことを好きになったんだと撫子はいいます。
ですが、撫子は暦お兄ちゃんの彼女の存在を知ることで壊れてしまいました。
呪わずにはいられず、結果的には扇に扇動された結果、今回の計画を建て実行してしまった。
結局のところ、偽りではなかったんです。


ラスボス、ラスボスと言われ続けていましたけど
こういう形のラスボスになるとは、いったい誰が予想できたのでしょうか。
セカンドシーズンから新たに登場した忍野扇が黒幕っぽく動いているので
本当の意味でのラストボスは忍野扇だとは思いますが、この伏線は残り2冊では明かされない気がします。
あとがきを読むとサードシーズンで明かされるんでしょうかね。


今回の話はある意味アニメでの人気の裏返しなのかもしれません。
萌えキャラ殺しの西尾維新の久々の本領発揮です。


惜しいのは、花物語が卒業後の話であったために、結末が見えてしまっている点です。
すでにわかっている決着をどう描いてくれるか、今から楽しみです。


9月の鬼物語も楽しみですが12月に発売されるであろう、恋物語がより楽しみになりました。