魔王なあの娘と村人A 〜幼なじみは勇者です〜 / ゆうきりん

魔王なあの娘と村人A 〜幼なじみは勇者です〜 / ゆうきりん / 電撃文庫
魔王なあの娘と村人A―幼なじみは勇者です (電撃文庫)

「だって、あなたたちはなんにだってなれるじゃないですか。村人になってもいいし、そうじゃなくて、サッカー選手にも、漫画家にも、タレントにも、会社員にもなれる。自分で選んで自分でなることができる。実際にはなれなくても、なろうとすることはできる。夢を持つことができる。そうでしょう? でも、わたしたちは違う。生まれたときからなれるものが決まっていて、それに縛られている。」
「だから、わたしはいつだってあなたたちがうらやましいです。」

特別な個性を持つ個性者と、個性持たない無個性者がいる世界。
無個性者である佐東二郎は幼馴染が『勇者』というレアな個性者であったため、常にその被害を受けてきた。

高校生になったある日、クラスの委員長に立候補した『魔王』の個性を持つ桜子になぜか、副委員長に指名されたのが運の尽き。
魔王と勇者の二人に振り回されることになるのであった。


面白かったです。
最近流行りの魔王物です。
今度の『魔王』もどっか抜けてる。
人類を滅ぼす計画がどれも地味かつ長期的すぎる。
しかも裏目に出ていい人に扱われるとか、可愛すぎる。


個性者には個性者の悩みがある。
冒頭に引用したように、自分で進む道が選べないというのは夢がない話です。
決められたレールに従って生きるのはある意味楽です。
でもそれって本当に自分の歩みたい人生なのかな?と思ってしまうのもわかります。
誰だって自由に生きてみたい。
特に、自分がその道で劣っていると分かってしまったときは辛いです。
『ネクロマンサー』の塚耶は「死者に触ることが出来ないこと」を悩んでいました。
彼女は魚屋のバイトを通じて欠点を克服しましたけど、
この先個性がある自分が嫌という人が出てきたりして。
案外、幼馴染の『勇者』翼は悩んでたりするのかも。
今回やったことのほとんどが裏目に出てましたし。


主人公の佐東、あれはあれで特殊な個性者なんじゃないかな。
個性者たちに好かれる無個性者って、なかなかいないみたいですし。
主人公体質というのは立派な個性だと思います。


そんな彼も最後に名前を覚えられ、今後はさらに非凡な日常生活を送ることになるのかな。
今後が楽しみな作品でした。