僕と彼女とギャルゲーな戦い / 西村悠

僕と彼女とギャルゲーな戦い / 西村悠 / メディアワークス文庫
僕と彼女とギャルゲーな戦い (メディアワークス文庫)

「みんな弱いよ。私だって……。多分、この世界には強い人なんていないんだよ。いるのは弱さを自覚していない弱い人と、弱さを自覚している弱い人だけ」
「君が挫折を知っててくれてよかった。人の弱さをわかってあげられない人に、人を楽しませることなんてできないもの。逃げた先にあるものを、伝えることができないもの」

11月のメディアワークス文庫から4冊目「僕と彼女とギャルゲーな戦い」です。
面白かったです。
物作りの大変さと現実がよく分かりました。


小説家を志すものの箸にも棒にもかからず、就職活動を行うも60連敗中の主人公嶋谷一はある日文芸部の部室を訪れると高校時代に憧れていた先輩三奈木仙香に出会う。
流されるまま先輩に連れられた先はギャルゲー開発会社でした。
そのまま先輩に拝み倒され新規開発するギャルゲーのシナリオライターをすることになる主人公はゲーム開発のキツさと楽しさを知っていく…そんな話です。


たった一つの連絡ミスから、納期の前倒し。
それによるクオリティダウンを迫られるシーンが印象的でした。
一つのトラブルを解決したと思ったら、もう一つ強烈なトラブルが起こりこちらは状況的に回避不能
主人公の気持ちが痛いほどわかります。

開発に携わる以上は最高のものを出したいけど、プロであるがゆえに妥協した作品を今世の中に出せる最高の物と言うしかない。
逃げてしまった主人公へ怒りをぶちまけた先輩*1の言葉は最近仕事にやる気を失いつつある私には耳が痛かったです。


そしてボロボロになりがらでも、一人で残って最後まで諦めずに作業する、仙香の姿には泣いてしまいました。
それでもゲームを作り続けるのはユーザから貰えるお金ではけして買えないもののためなんですね。


最後に彼が内定先を蹴り、この会社に就職したところは嬉しかったです。
境遇や環境は最悪かもしれないけど、それ以上の価値を見いだせたのだと。
私には見つけられなかったものを見つけられた主人公が羨ましく思いました。

*1:憧れの先輩仙香とは別