月だけが、私のしていることを見おろしていた。 / 成田名璃子

月だけが、私のしていることを見おろしていた。 (メディアワークス文庫)

「それでも、出来事が起こった当人だけは、大騒ぎしながら生きていくしかないわけだけどさ。まあ、生きて大騒ぎできるのもまた、幸せじゃない?」

週末の結婚式で別れてから一年が経つ元恋人と再会することがわかり、憂鬱な日々を過ごしている咲子。そんな咲子の行方末が心配だと、後輩に連れられていった婚活占いでは『この一週間がラストチャンス。この出会いを逃したら一生独身』と宣言されてしまった。
そんなときに上司から持ち込まれた見合いの話。
背に腹は代えられぬと、咲子は見合いをすることを承諾するのであった。

第18回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作『月だけが、私のしていることを見おろしていた。』です。

29歳という、いろいろと悩み多い年頃の主人公の心の葛藤がよく描かれてて、彼女と歳の近いは私には共感できる部分が多く、何度か心を抉られました。冒頭の出社前の気持ちや、元恋人への葛藤などリアルすぎる。新しく出会う人に対して、心のどこかで元恋人と比べてしまうところとか、ありすぎて凹んだ。

望遠鏡で偶然覗いた先に見えた彼とのやりとりや、御曹司とのデートを重ねていく内に、次第に自分の本心に気づく咲子。辛くても自分の本心に従い勇気を出して向きあった結果、幸せを取り戻すことができて良かった。彼女の選択は賛否両論かもしれないけど、私は支持したい。
未練たらたらでもいいじゃない。

「自分を幸せにできるのは、自分の選択だけなんです」

日々流されながら生きている私にもいつか、選択できる日が訪れるのだろうか。
その時まで変わらずに生きていられたらいいな。


メディアワークス文庫:ウェブ書き下ろし小説】
http://mwbunko.com/nw_novels/
公式サイトで公開されている短編『ミス・ブースカのいる街角』も面白かったです。
とても気になるところで終わっていたのですが、あれで終わりなんですかね?
彼女の初恋の行く末を最後までみてみたい。
第1回ってあるから、続くよね?

後輩の女の子もいい子だったから幸せになって欲しいな。
上の短編と合わせて、彼女メインの話も読みたいな。