金は彼女の回りもの / 時田唯

金は彼女の回りもの (電撃文庫)

「ねえ、透、どうしてあなたは、私を裏切らないのですか……?」

母の残した借金を肩代わりしてくれたのは、同級生のお嬢様、家宝さん。
彼女に人生を救ってもらった主人公は恩返しをさせてくれと彼女の下僕に成ることを宣言する。
彼女はそんな彼の態度を信用はできないものの、本気かどうか確かめるために彼の提案にのることにした。

1月の電撃文庫の新刊『金は彼女の回りもの』です。

真心をテーマにしたいい物語でした。
テンポよく話が進むため、かなり読みやすかったのも良かったです。


恩返しという名目のみで行動する主人公の態度を理解できないヒロイン。
一度突き放されますが、期待に応えるべく奮闘する彼の誠意ある行動にヒロインは次第に心を揺り動かされていきます。

なんとかヒロインからの信頼を得たものの、今度は幼馴染が怒り出す。
急に主人公と日々を過ごすことになったヒロインに対して勝負する修羅場展開に。
これがなかなか面白かった。

終盤、ヒロインの誕生パーティで彼女が自分に擦り寄ってくる相手を信用できなくなった理由を知る主人公。彼女に近寄ってくる大人たちを相手に、自分の信念を貫き通す透がかっこ良かったです。


真心で助けられたことがある彼が目指す、誠意と信頼の連鎖。
最後までブレない彼の行動は好感が持てました。
ちょっと鈍感なのが気になりましたけど、この先も彼女の心の支えになってくれそうです。


両親を失ってからお金はあっても幸せでなかったであろう彼女が手に入れた下僕は、この先彼女に幸せを運んで来てくれそうです。


それにしても、どんな育てられ方をしたらあんな聖人君子に育つんだろう。