“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 / 高木敦史

“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 / 高木敦史 / 角川スニーカー文庫
“菜々子さん”の戯曲  Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)

「せっかくいいトコまで来たのになあ。たったひとつにして最大のボトルネックだったあなたの性格、めんどくさがり、それをぶち破って、心の隙を作り出せるチャンスだったのに。もうちょっとわたしに寄りかからせられたのに、一歩及ばなかったわ。だから今回は切り替えるわ。予定を。いつかの次に繋げるための」
「わたし結構粘着質っていうか、ストーカー気質みたいなのあるから気をつけて。言っておくけど、今回わたしは坪手くんを助けたんだからね」
「これは、貸しだから」

第13回角川学園小説大賞 優秀賞作品です。
表紙とあらすじに惹かれて手にとってみました。
これは凄い良かったです。
最近のライトノベルとはちょっと異なる雰囲気であり、ミステリとして読んでも非常に完成度が高いと思いました。


三年前の小学生のときに起こった事故で3人の子供はそれぞれ、命と体の自由と名前を失ってしまった。
そしてある日、本名を呼ばれると発作が起きてしまう菜々子さんは、意識はあるものの全身麻痺状態のために意思疎通が出来ない男の子坪手くんに言います。
「わたしは、あの事故は、事件だと思うの」
この一言をきっかけに坪手くんは三年前の事件の犯人が誰だか特定しなければ行けない状況に追い込まれていきます。
物語は坪手くんが菜々子さんとの過去の出来事と坪手くんの推理と交互に進んで行きます。


エピローグを読んで菜々子さんの目的がわかった瞬間、完全にヤラれたと思いました。
副題の意味もそういう意味だったのかと。
過去のエピソードから菜々子さんの坪手くんへの執着っぷりは分かってたけど狙いまでは推理出来なかったです。
本当に見事に呪いをかけたものだ。
この呪いを解くには素直に恋人同士になるしかないと思うけど、今後二人の関係はどうなっていくのか楽しみです。
なにはともあれ、二人の体が良い方向に進んだは良かったです。