確率捜査官 御子柴岳人 密室のゲーム / 神永学

確率捜査官 御子柴岳人 密室のゲーム

「確率や統計において、100パーセントは存在しない」
「絶対ではない……」
「そういうことだ」

昨今問題になっている、警察の取り調べの問題。
取り調べの可視化や正確性を求める声が高まってきた問題に対応するために新設された<捜査一課特殊取調対策班>。
そこへ異動してきた新妻友紀が出会った人物はエキセントリックな数学者、御子柴岳人だった。
ゲーム理論を用いれば、容疑者が黙秘を続けたとしても、真相を導き出すことができる」という、御子柴。
「人の心は計算できない」と、反論する友紀。
出会ってそうそう喧嘩し始める二人だが、早速事件の取り調べを行うことになる。
数学を使った新しい取り調べが今始まる。


心霊探偵八雲で有名な神永学先生の新作『確率捜査官 御子柴岳人』です。
本作は昨今騒がれている警察の取り調べに関する問題を題材にした作品です。
タイトルに密室のゲームとありますが、これは取り調べを行う環境が密室という意味のようで、密室の謎を解くというミステリではありませんでした。


自白の強要などしてはならないと思う友紀(女刑事)と、ゲーム理論で真相を導き出せると考える御子柴(数学者)のコンビが、彼の言葉通りに数学で真相を導きだしていく展開は詰将棋を見ているようで面白かったです。最後の展開はまさにゲームそのもの。見事に犯人を追い詰めていきます。


御子柴は前作の八雲と同様、無愛想かつ、エキセントリックな行動を取る変人。
それに対応する友紀は可哀想ですけど、彼らのやりとりを見てみるとお似合いカップルにしか見えない。
友紀に弱点だと思われていた諺を早々に克服する御子柴は可愛かったな。
でも出会ったばかりのためか二人の距離はまだまだ離れてる感じなので、今後に期待したい。


本作には前作からのファンは思わずニヤリとしてしまうあの人物が少しだけですが登場します。
物語には深く関わってこないのですが、これは嬉しい演出でした。


終盤に今回の事件の犯人とは別に、友紀の父親を殺した犯人が別にいると判明するのですが、その真犯人が簡単に予想できてしまったのが若干残念。
この先は逆転裁判のように往生際の悪い犯人が登場して、ギリギリまで自白しない展開になるんでしょうかね。


また一つ楽しみな作品が始まりました。