愚者のエンドロール / 米澤穂信
「誰でも自分を自覚するべきだ。でないと。……見ている側が馬鹿馬鹿しい」
『氷菓』アニメ化記念、再読第二弾。
古典部シリーズの2作目『愚者のエンドロール』です。
脚本家のメンタルダウンにより作成が一時中断されたミステリー映画の結末を古典部が推理するという話。
探偵役などやるつもりも無かった奉太郎が見事に乗せられてしまう展開が面白い。
それも千反田ではなく依頼者の入須先輩の手によって。
奉太郎を「力」のタロットカードに見立てた里志は慧眼だ。
奉太郎と同様に彼も自身の評価が甘い気がする。
そして奉太郎を「星」のタロットカードに見立てた千反田。
彼女が奉太郎に対してどんなイメージを持っているかがわかりニヤリとさせられた。
やっぱりこのふたりの関係好きだな。
氷菓 / 米澤穂信
アニメ化ということで、4年ぶりに再読。
名作は何度読んでも面白い。
大分忘れているところもあったためか、いろいろと新鮮に感じた。
特に奉太郎の推理力の高さはちょっとビックリ。
こんなに頭良かったんだっけ?
古典部シリーズは主人公の奉太郎とヒロイン千反田の距離感が好き。
思えば、奉太郎は最初から、千反田に振り回されぱなしだったとは。
早々と抵抗することを諦めているのは彼らしい。
同じ日常の謎を題材にした「小市民シリーズ」もそうですが、米澤さんの学園物やっぱり好きだ。
古典部シリーズは、『ふたりの距離の概算』が刊行されてから早2年。
小市民シリーズに至っては、もう3年も新刊が出ていない…。
冬季限定が出るのはいつになるのだろうか。
古典部シリーズもアニメ化を機に新刊が出たりしないかな。
三匹のおっさん ふたたび / 有川浩
「でも俺たちもう子供じゃないけどまだ大人じゃないんだ」
有川さんの最新作『三匹のおっさん ふたたび』です。
あのカッコイイおっさんたちが再び舞い戻ってきた。
どの話も身近にありそうな話ばかりで、前回よりもさらにモラルを問う内容となっていた。
すべてが丸くおさまるという都合のいい展開で終わらない話もあり、いろいろと考えさせられる。
今回は周囲の人たちにスポットをあてた話が多く、より一層、世界観が広がって楽しめた。
祐希の知らぬところで、母親と彼女が知りあってしまうシーンはニヤリとしました。
祐希と清一のなんとなく通じ合ってる関係は心がなごみます。
ああいうのってなんかいいですよね。
こんな世の中になっても、世代を超えても通じるものはあるんだと思えます。
帯の情報によると次の有川さんの新作は7月の『空飛ぶ広報室』かな。
どんな話になるか想像がつかないですが楽しみ。
11月まで刊行予定が決まっていると、シアター3巻は当分先なのですかね。
PK / 伊坂幸太郎
「簡単だよ。何をしても、大きな影響がないんだったら」
「だったら?」
「子供たちに自慢できるほうを選べばいいんだから」
伊坂さんの新作『PK』です。
表題作の『PK』から始まり、『超人』、『密使』と中編が3編収録されています。
各物語の中で語られる、一見どうでもいい内容が実は他の話と微妙に繋がっているという、伊坂さんらしい巧みな物語でした。密使を読みえ終えたあと、PKと超人との差を探しにページを遡ったの人はきっと多いはず。
3編の中で一番好きなのは表題作の『PK』。
物事が起きた瞬間には、些細な出来事だったはずなのに、それが実は大き流れをつくる契機だったとは、あとになって判明することはよくある話。誰もが、何気ない日常生活の中で、選択をせまられ勇気を試されていと思えば、自分の選択など大したこと無いのかもしれない。それでも、出来る限りは正しい選択をしたいものです。少なくとも、未来の自分に笑われないように。
短い物語の中に、心に残る言葉が多く綴られていて、今まで以上にメッセージ性の強い作品でした。久々の伊坂さんの物語でしたが、昔の伊坂さんらしさを取り戻したような気がして面白かった。
特等添乗員αの難事件I / 松岡圭祐
「根拠を持たずとも自由な発想で正答に肉薄する。あなたはその資質に恵まれているんですよ。ラテラル・シンキングの才能に」
万能鑑定士Qシリーズの姉妹シリーズが開始。
ロジカル・シンキングの対極の思考方法『ラテラル・シンキング』の使い手、浅倉絢奈が活躍する物語。
角川文庫の新刊『特等添乗員αの難事件I』です。
展開がシンデレラ・ストーリーなのは万能鑑定士と同じだけど、人が成長して活躍する物語はやっぱりイイものです。
最初の試験の回答は笑わずにいられませんでしたが、教育されてからの彼女は本当見違えた。天真爛漫という言葉がこれほど似合う女性もなかなかいない。魅力溢れた主人公で読んでて楽しかった。教育者の能登さんもいいキャラしてて、壱条さんを含めた3人の関係がとても微笑ましい。
途中、自分の思考方法に自信が持てず、落ち込む彼女でしたが壱条さんのお陰で見事に復活。
小笠原と莉子と比べてあっさりとカップルになったのは笑った。こんなとこまで対極にしなくても。
小笠原はもっと頑張れ。
ロジカルの莉子とラジカルの絢奈ふたりが組めば怖いものはない。
ふたりの活躍にこれからも期待です。
万能鑑定士Qの推理劇I / 松岡圭祐
「鑑定は過去の価値を問いません」
「いまどうあるかです」
タイトルが新しくなっても相変わらずの面白さ。
序盤に莉子がどのようにして賢くなったかダイジェストで振り返るシーンが挟んであるため、
前シリーズを読んだことがない人でも楽しめると思います。
コンビニの強盗事件に始まり、角川新社屋で起きた事件に宝石鑑定トーナメント。
次々と事件を解決していく様子は相変わらず。
最後にすべてがまとまっていく展開は綺麗でした。
ただ事件を解決するだけではなく、犯人を更生させてしまうところが莉子のすごいところ。
やることなすことすべて見破られてしまっては、そうならざるを得ない。
今回の恋愛部分についてですが、
女性に優しくしようとする小笠原に対して嫉妬する莉子がかわいかったです。
小笠原くん。どうみても脈があるから、もっと頑張れ。
物語の終盤には、2月から始まるまた別の新シリーズ『特等添乗員αの難事件I』の主人公が初登場。
主人公の浅倉絢奈は莉子のロジカル・シンキングとは対を成す思考法「ラテラル・シンキング」の使い手。
彼女の聡明さは本作の登場シーンだけでも窺えました。
今度の主人公は莉子がなれなかった添乗員。
彼女がこれからどんな活躍を魅せてくれるのか今から楽しみです。
Another / 綾辻行人
「ものごとには知るタイミング、っていうのがあるの。いったんそれを逃したら、知らないままでいたほうがいいこともあるんじゃないかな。少なくとも、しかるべき次のタイミングが来るまではね」
綾辻行人の長編本格ホラーとありますが、個人的にはミステリーでした。
上巻では、見崎鳴は存在しているのか?していないのか?
下巻では、クラスに紛れ込んだ人が誰なのか。
いろいろとあれこれ推理しながら読めて楽しかったです。
特に、上巻は展開と演出が見事。主人公と同様に疑心暗鬼になりかけました。
そして下巻を含めてて、いろいろ気付けなかった自分にガッカリ。
今思うとあからさまに怪しい伏線がいくつもあったのに。
流石ミステリー作家。
各所にちりばめられた伏線が綺麗に消化されたのは見事。
来年にはアニメと実写映画で映像化されるそうです。
この物語の核となっている部分がどう表現されるのか今から楽しみです。
以下の内容はネタバレを含んでいます。
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