クロス×レガリア 死神の花嫁 / 三田誠

クロス×レガリア    死神の花嫁 (角川スニーカー文庫)

「……ああ、そうだよ。俺は未熟で弱い。それがすぐ変わったりするはずもない」
「だから、みんなに頼るのさ」

角川スニーカー文庫1月の新刊「クロス×レガリア」の4巻『死神の花嫁』です。

「白翁になるはずだった」という衝撃の発言をひっさっげて登場してきたジンの幼馴染、灰岡ジン。
ナタと同じ鬼仙兵器であるウーと共に、馳郎とナタに襲いかかる。
そして、人工知能カエアンにもツールという、鏡合わせの存在が。
ライバルと呼ぶにここまで相応しい相手もなかなかいない。

今回の話で何より、感動したのは「カエアン」とリコのやりとり。
マスターである馳郎のために、自身の改造を要求するカエアン。

自身のアイデンティティが宿っていると思われていた部品、旧式チップへの改造はどんな影響がでるかわからないと反対するリコ。
それでも「マスターと覚悟を共にしたいという」彼の決意は、心が宿ったようにみえて感動した。
人工知能さえも動かしてしまう馳郎、流石です。白翁を継いだだけある。

彼の強さは、「自身を未熟だと」と認識しているところ。
しかもその未熟さを言い訳にしないで、信念を持って行動するからみんなついていくんだろうな。

そして彼が用意した最後の切り札はすごすぎ。
あんなものが作れるとか、だれも想像できないでしょう…。
反則な気がしないでもない。

今回の件でナタと馳郎の距離は縮まったけど、蓮花は胸中複雑なんだろうな…。
自身の気持ちに気づいてしまったがゆえの苦しみを彼女は消化できるんだろうか。
今後が心配です。

このエピソードで話が一段落ついたような感じですが、次回はどんな展開になるんでしょうか。
次も楽しみ。

万能鑑定士Qの短篇集 2 / 松岡圭祐

万能鑑定士Qの短編集II (角川文庫)

「また。純粋すぎるよ。世のなか善意を理解できる人ばかりじゃないんだよ。だからこそ……」
「何?」
「パートナーが必要だろ。僕はそう思ってるけど」

万能鑑定士Qの短篇集、2冊目。

今回は連作短編ではなく、普通の短篇集。
印象に残った話は、「雨森恋華の出所」と「チェリー・ブロッサムの憂鬱」。

莉子のおかげか、恋華はいい方向に変わりましたね。
やってることは相変わらず詐欺だけど、シロサギからクロサギに変わった感じかな。
完全に足を洗ってはないけど、これなら大丈夫と感じさせるお話でした。

「チェリー・ブロッサムの憂鬱」の莉子の行動力には驚かされた。
なにしろ、事件を解決しようとする動機が、小笠原とデートするため。

前の巻から、さらに二人の仲が進展してるじゃないですか。
他のエピソードでも、警察で捜査を断られた人に小笠原を紹介していたり、彼に対する信頼度がすごく上がってるのが伺えましたけど、まさかここまで距離が縮んでると思わなかった。

それでも、正式に付き合ってるかわからないあたりは二人らしいなって感じ。
もうさっさと告白して欲しいです。

次回は、万能鑑定士シリーズではなく、特等添乗員シリーズ。
久ぶりの絢奈の活躍が楽しみです。

万能鑑定士Qの短篇集 1 / 松岡圭祐

万能鑑定士Qの短編集I (角川文庫)

「いったとおりだろ。彼は有望な記者さ。きみの心もお見通しだったんだよ」

万能鑑定士Qの短篇集です。

連作短編形式の外伝。
とある人気質屋に一ヶ月行くことになった莉子の話。

1話目に小笠原が出てこなかったので、恋愛関係は進展なしかとおもいきや、2話目に登場してからは怒涛の小笠原押しの展開に。
駒澤さんのおかげもあってか、二人の仲が一気に進展してびっくり。

小笠原のかつての恋人が登場し、二人の仲を見せられた莉子が思いのほか動揺し嫉妬するところはニヤニヤしてしまった。
あれだけ一緒にいたのに、小笠原のことを意外と知らないと気づいたりして、莉子にとっていいクスリになったと思うエピソードが多かったですね。
小笠原が頼れる男だといまさらながら気づいた莉子。
ようやく、二人の仲が進展し始めて良かった。

普段と違った、この連作短編形式もなかなかいいですね。

彼女と僕の伝奇的学問 2 / 水沢あきと

彼女と僕の伝奇的学問〈2〉 (メディアワークス文庫)

「あのふたりのことを間違ってるなんて言える人は、どこにもいないということです」

メディアワークス文庫12月の新刊「彼女と僕の伝奇的学問」です。

フィールドワークしに行くという流れは前回と同じ。
今回は会長の風守さんの友人の子がいる島へ調査に赴く。

物語のお約束的に今回も儀式が無事に終わるはずもなく、儀式の結果、会長が土牢に閉じ込められてしまいます。
でも前回と違って、今回はアウェーではないためか、緊張感はあまり感じませんでした。

今回読んで改めて思いましたが、この研究会って風守会長と雪希と主人公の能見だけでもってるような。
他のメンバーが空気すぎてヤバイ。
特にヒロインだと思われてた、七海と桜花がほんとど何もしてないんだけど…。
この先もこの展開だとちょっと厳しいなと思いました。

“朝顔” ヒカルが地球にいたころ…… 6 / 野村美月

“朝顔

「とことんつきあってやるよ」

ファミ通文庫12月の新刊「ヒカルが地球にいたころ」の6巻『朝顔』です。

予告通り、朝ちゃん回。

普段から彼女に嫌わている是光は、案の定近づいたけで罵詈雑言を浴びるはめに。それでもめげずにヒカルとの約束を果たそうと奮闘する是光。
朝ちゃんが抱えている問題に本気で悩み、頭を抱えたりもしたけど、帆夏のアドバイスにより迷いを吹っ切る。

『字合わせ』のシーンの是光はとても素晴らしかった。
彼が選び、送った字は、人の生き方を変えてしまうほどに強烈なメッセージが篭ったものだった。

大切なことを気づかせてくれる彼に、様々な人が次々と惹かれていくのもわかる。
難攻不落かと思われた、朝ちゃんまでも落としてしまうのは見事。
さすが、ヒカルの跡を継ぐハーレムキング。頭条俊吾が頭抱えたくなるのも無理ない。
自覚がない分、ヒカルより質が悪いですね。

それにしても帆夏の親友の花里さんの変わりっぷりには驚いた。
恋は女を美しくするとはまさにこのこと。
まさかあそこまで可愛くなって、積極的な行動でるとは予想外だった。

恋と友情の間で揺れる帆夏の行動は、彼女には悪いけど見てて楽しい。
でも、なんだかんだいって、是光との距離は一番縮まってる気がする。
これからも焦らず頑張って欲しい。

物語はようやく折り返しということで、ついにヒカルの最愛の人の目星もついてきました。
予想が当たってるといいな。おそらくヒカルの義母の藤乃だと思うけど…。

次回『空蝉』は来春とのこと。
楽しみです。

お願いだから、あと五分! / 境京亮

お願いだから、あと五分! (MF文庫J)

「私は君を巻き込んだんだよ?」
「きっかけはそうかもしれないが、決めたのは俺だ。俺が自分の意志で決めたんだ」

第8回MF文庫J 新人章受賞作『お願いだから、あと五分!』です。

面白かった。
ヒロインのコトハと主人公の優一の距離感というか、雰囲気がとても素敵な物語でした。

特に魅力的なのがヒロインのコトハ。
表情豊かでちょっとイタズラ好きな感じがツボでした。
二人がイチャイチャしてるシーンは、読んでて楽しかった。

最後の決戦を前に、互いの過去の話を打ち明けるシーンは、二人の絆をより強固にさせていて、とても印象に残った。
お互いに出会えて良かったといえる関係は純粋に羨ましい。
共依存に見える二人の関係は危うくみえるけど、彼女のために頑張る主人公と、主人公のために頑張るヒロインの関係は素敵。
こんなお似合いのカップル久しぶり。

次の巻もでますよね?
期待してます。

スカイ・ワールド 3 / 瀬尾つかさ

スカイ・ワールド3 (富士見ファンタジア文庫)

「ジュン。ひとつだけ、忠告しておきますわ。仲間だと思ってくださるのでしたら、あなたもまた、わたくしたちのことを信じてください」

ファンタジア文庫12月の新刊『スカイ・ワールド』の3巻です。

前回のクエスト攻略報酬として、セカンドクラスが解禁。
ROでいう二次職みたいなものかと思ったら、FF11みたいなサポートジョブシステムみたいな感じなのかな?
ファーストクラスとは無関係に選ぶことができて、いつでも変更可能というのはいいですね。
状況応じたクラスチェンジなどいろいろ研究しがいがある、ジョブシステムで楽しそう。

前の巻でも示唆されていましたが、原住民が単なるNPCではなく、感情を持った一人のキャラクターという設定はログ・ホライズンと同じですね。
さっそく新たな島で、クエストが作り出すことができる力を授かったという姫様と共謀してクエストクリエイトの力の解析に精を出すとか、さすがネトゲ脳主人公。
同じゲーム好きとしてはわからなくもない。

今回はその姫様が誘拐される事件を舞台にしたお話。
だけど話のメインは、前回パーティに加わったユーカリアでした。

エロイことを言ってるパーティのムードメーカー的お姉さんキャラだと思っていただけに、彼女のトラウマ話はちょっと意外でした。
しかし仲間を見捨てず、最後まで彼女のことを信じ行動したジュンは以前と比べて成長した気がします。
未だに、サクヤのことを隠していててカスミに対してはっきりしない行動してるところは、まだまだヘタレですけどね。

新たなに召喚士のヒカルを加え、ますますハーレムパーティに磨きがかかるジュン御一行。
次回はそのヒカル回になるのかな?

次も楽しみ。